長谷川幸男

曖昧さ回避 この項目では、ロボット研究者について説明しています。文学者については「長谷川幸男 (児童文学)」をご覧ください。
長谷川 幸男
Yukio HASEGAWA
人物情報
生誕 (1927-05-09) 1927年5月9日[1][2][3]
日本の旗 日本 東京都[4]
死没 (2016-05-23) 2016年5月23日(89歳没)[3]
居住 日本の旗 日本埼玉県さいたま市
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
スイスの旗 スイス
出身校 早稲田大学
学問
研究分野 生産工学ロボット工学
研究機関 精工舎
ミシガン大学
早稲田大学
ローザンヌ工科大学
SOINN株式会社
博士課程指導学生 玉木欽也[5]
学位 博士(工学)(早稲田大学)[6]
主な業績 産業用ロボットに関する国際的な活動(国際ロボット連盟、国際標準規格制定)JIS規格制定[7]、建設ロボット共同プロジェクト「WASCOR」[8]
影響を与えた人物 杉本旭[9]
学会 国際建設ロボット学会、日本機械学会、日本ロボット学会、日本工学アカデミー
主な受賞歴 エンゲルバーガー賞(1977年)[10]
ゴールデン・ロボット賞(1990年)[7]
瑞宝中綬章(2015年)[11]
テンプレートを表示

長谷川 幸男(はせがわ ゆきお、1927年(昭和2年)5月9日[1][2] - 2016年(平成28年)5月23日[3])は、日本のロボット研究者、エンジニア。学位は、博士(工学)早稲田大学)。同名誉教授精工舎技術課長、能率課長、早稲田大学生産研究所助教授、同大学システム科学研究所[注釈 1]教授を歴任。国際ロボット連盟や国際建設ロボット学会では会長を務め[1]、産学共同の建設ロボット化プロジェクト「WASCOR」を主導した[8]1977年に第1回エンゲルバーガー賞を受賞し[10]2015年には瑞宝中綬章を受章している[11]

来歴・人物

長谷川は1951年早稲田大学理工学部工業経営学科(機械分科)を卒業し、精工舎へ入社。生産技術に携わる[1]1957年から1958年にかけてミシガン大学に滞在し、生産技術を研究する[1]

アメリカから帰国後は引き続き生産技術に携わるとともに、技術課長や能率課長を務める。1965年より早稲田大学生産技術研究所助教授に転任。同研究所はシステム科学研究所[注釈 1]に改変され、1971年からは教授となる[1][2][7]

1980年頃には、産学連携で実施された「建築用コンクリート打ち込み型わくのハンドリング組立自動化モデル策定研究」の委員長を務め[14]1982年からは11社と共同で建設ロボット化共同プロジェクト「WASCOR」[注釈 2]を開始する。このプロジェクトは15年間に及び、31件の特許が出願された[15][16][8]。また、システム科学研究所では、社会人向けのロボット講座も実施している[17]

1978年1989年にはスイスローザンヌ工科大学客員教授として、組み立てロボットの研究開発に協力する[2]。また、ロボットの国際標準規格制定に関する活動にも関与した[18][19][20]。この間、1985年に体調を崩し、委員会の役職を代わってもらうこともあった[18]1990年頃には、国際ロボット連盟(IFR)と国際建設ロボット学会(IAARC)では会長を務めた[21]

学術的な研究としては、ロボットの関節構成に関する研究[22][23]、建設作業の解析[24]や建設作業のロボット化に関する研究[25][26]を進めている。なお、1998年に『建築作業におけるロボット化の技法に関する研究』として博士論文をまとめ、論文博士博士(工学)学位を取得している[6]

なお長谷川は伊豆高原別荘を持っており、研究室の夏合宿で学生達を招待していた[27]。また、正月には自宅に学生を招いており、夫人が手料理を提供していたという[27]。1997年度いっぱいで早稲田大学を定年退職し[28]、同大学名誉教授となる[注釈 3]

定年後も2001年開催の国際会議でバンケットのスピーチを担当したり[30]、2003年の学会誌に解説を執筆した[31]。また、晩年は財団の表彰や研究助成で審査委員を務めたり[32]、企業の研究協力に携わったりするとともに[33]東京工業大学准教授の長谷川修が立ち上げたベンチャー企業「SOINN株式会社」でも取締役相談役を務めた[34]2016年5月23日死去[3]

受賞・栄典

著作

学位論文

  • 『建築作業におけるロボット化の技法に関する研究』早稲田大学博士論文(乙第1365号)〉、1998年3月5日。https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000321975-00 [注釈 4]

著書

  • 『多品種少量生産システム』 日刊工業新聞社、1970年(編集)
  • 『応用ロボット工学』 朝倉書店、1984年5月、ISBN 978-4-254-23035-2(監修翻訳)[注釈 5]
  • 『ロボットと社会』 岩波書店〈New science age 12〉、1985年8月、ISBN 4000076620(単著)
  • 『建設作業のロボット化』 工業調査会、1999年6月、ISBN 4769321457(編著)

解説

(建設ロボット)

  • 「産業用ロボットの建設工事への応用に関する実用化のステップ」『コンクリート工学』第19巻第12号、1981年、22-29頁。 (共著)
  • 「建設におけるロボットと自動施工」『計測と制御』第31巻第4号、1991年、479-484頁。 
  • 「建設ロボットの最近の話題」『日本ロボット学会誌』第11巻第1号、1993年、67-70頁。 
  • 「建設ロボット ―実用化のための諸課題―」『日本ロボット学会誌』第21巻第3号、2003年、232-235頁。 

(ロボットと社会)

  • 「社会システムとロボット」『日本ロボット学会誌』第1巻第1号、1983年、38-43頁。 
  • 「社会の立場から見たロボットの課題」『日本ロボット学会誌』第3巻第1号、1985年、22-29頁。 (共著)

(ロボット・標準化)

  • 「製造環境下におけるロボット国際標準について (ISO/TC 184/SC 2)」『日本ロボット学会誌』第4巻第1号、1986年、24-27頁。 
  • 「〔座談会〕ロボット標準化の現状と今後の課題」『日本ロボット学会誌』第4巻第1号、1986年、47-53頁。 

(ロボット・生産システム)

  • 「人間・ロボット・工場 ―未来の生産システム―」『精密機械』第41巻第480号、1975年、62-66頁。 
  • 「QWLとロボット」『計測と制御』第16巻第1号、1977年、111-116頁。 
  • 「生産システムの自動化におけるロボットの役割」『日本ロボット学会誌』第5巻第3号、1987年、204-210頁。 
  • 「CIMとは何か」『電気学会論文誌D(産業応用部門誌)』第109巻第3号、1989年、146-149頁。 (共著)

(その他)

  • 「産業用ロボットとマイクロコンピュータ」『電気学会雜誌』第103巻第5号、1983年、436-438頁。 
  • 「早稲田大学におけるロボット工学教育」『日本ロボット学会誌』第3巻第6号、1985年、574-578頁。 (共著)

講演録

  • 『匠の技と心とロボット』早稲田大学図書館 請求番号 8T-346(非売品)、104分[28]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ a b システム科学研究所は産学官の受託・共同研究が特徴であった[12]。同研究所はアジア太平洋研究センターに改変され、一部はそこから分離したWBS研究センターに継承されている[12][13]
  2. ^ WASCOR は WASeda COnstruction Robot から来ている[1]
  3. ^ 最終講義が1998年3月9日[28]であり、「1997年度定年退職」[28]とされているので、名誉教授になったのは1998年の4月以降。日本ロボット学会誌の追悼における「平成9年 早稲田大学名誉教授」[29]の記述は間違い。
  4. ^ 学位論文の要旨が、建築雑誌『建築年報1998』p.97(1998年9月)NAID 110003796964に掲載されている。
  5. ^ J.F.エンゲルバーガー 著、杉本旭・高島覚・正木一郎 翻訳(出版社サイトより、2016年5月3日閲覧。)。

出典

  1. ^ a b c d e f g 長谷川幸男 1992, p. 484.
  2. ^ a b c d e 長谷川幸男 2003, p. 235.
  3. ^ a b c d JRSJ追悼 2016, p. お知らせ3.
  4. ^ 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.424
  5. ^ 玉木欽也『設備計画に関する研究 ―ロボット関節構成の選定方法の開発―』早稲田大学博士論文(甲第802号)、1989年6月22日
  6. ^ a b 長谷川幸男 1998.
  7. ^ a b c d e f 「日本ロボット学会名誉会員のご紹介」『日本ロボット学会誌』第20巻第4号、2002年5月、お知らせ2。 
  8. ^ a b c 高西淳夫 2013, p. 10.
  9. ^ 杉本旭「第13回産業用ロボット国際シンポジウムに参加して」『日本ロボット学会誌』第1巻、第2号、1983年、61-64頁
  10. ^ a b c "Past Recipients by Year" (PDF). Robotics Online > Joseph F. Engelberger Awards (Press release). Robotics Industry Association. 2016年5月3日閲覧
  11. ^ a b c 『平成27年 春の叙勲』(PDF)(プレスリリース)。http://44c6cd6da5a332.lolipop.jp/soinn_com/soinn_new/misc/zuiho-chujusho.pdf2016年5月4日閲覧 
  12. ^ a b “概要”. アジア太平洋研究センター. 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 国際関係学専攻. 2016年5月13日閲覧。
  13. ^ “WBS研究センターについて”. 早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究センター. 2016年5月13日閲覧。
  14. ^ 上野・長谷川 1981.
  15. ^ 久武経夫 2007.
  16. ^ 久武・中里 2011.
  17. ^ 長谷川・白井・高西 1985.
  18. ^ a b 高橋浩爾「産業用ロボットの安全 (ISO/TC184/SC2/WG3)」『日本ロボット学会誌』第4巻第1号、1986年、37-38頁。 
  19. ^ 長谷川幸男 1986.
  20. ^ 『平成7年度産業用ロボット国際標準化対策事業報告書』(レポート)社団法人日本機械工業連合会、社団法人日本ロボット工業会、1986年6月。 
  21. ^ 長谷川幸男 1993.
  22. ^ 玉木欽也、長谷川幸男、石舘達二「ロボットのリスト関節構成に関する幾何学的特性の解析」第55巻第515号、1989年。 
  23. ^ 玉木欽也、長谷川幸男、石舘達二「ロボットアーム関節構成に関する作動領域の幾何学的特微による分類」『日本ロボット学会誌』第6巻第6号、1988年、507-516頁。 
  24. ^ 伊早坂睦、平澤尚毅、横溝克己、三浦延恭、長谷川幸男「鉄骨建方作業における鳶工の情報処理過程に関する研究」『人間工学』第23巻、1987年、212-213頁。 
  25. ^ 長谷川幸男「鉄筋コンクリート建築物建物作業のロボット化について」『システム科学研究所紀要』第13号、1982年3月、75-87頁。
  26. ^ 長谷川幸男「モジュール化建設ロボットのための要求動作仕様の記述方法について」『システム科学研究所紀要』第24号、1993年3月、101-109号。
  27. ^ a b JRSJ追悼 2016, p. お知らせ4、玉木欽也「追悼 長谷川幸男先生を慎む」
  28. ^ a b c d “早稲田大学関係 定年退職教員最終講義”. 早稲田大学図書館. 2016年5月13日閲覧。
  29. ^ JRSJ追悼, p. お知らせ3.
  30. ^ 高信英明「第32回ロボティクスに関する国際シンポジウム (ISR 2001) 報告」『日本ロボット学会誌』第19巻第7号、2001年、852頁。 
  31. ^ 長谷川幸男 2003.
  32. ^ “専攻方法[審査委員会]”. 表彰・研究助成. スガウェザリング技術振興財団. 2016年5月4日閲覧。
  33. ^ “メンバー紹介”. 株式会社ケン・リサーチ. 2016年5月4日閲覧。
  34. ^ “会社概要”. SOINN株式会社. 2015年5月4日閲覧。
  35. ^ 「会員の受賞」、日本工学アカデミー、2015年11月18日、2016年5月4日閲覧 
  36. ^ “名誉会員”. 学会案内. 日本ロボット学会. 2016年5月4日閲覧。
  37. ^ “設立特別功労賞”. 表彰. 日本ロボット学会. 2016年5月4日閲覧。

参考文献

  • 「追悼 名誉会員 長谷川幸男先生を悼む」『日本ロボット学会誌』第34巻第7号、2016年9月、お知らせ3-4。 (学会誌掲載前のWebサイト上での訃報 - 2016年8月5日公開で内容は同じ、2016年9月6日閲覧。)
  • 高西淳夫「総論 なぜ今ロボットなのか」『Civil Engineering Consultant』第261巻、2013年10月、8-11頁。 
  • 久武経夫「第23回国際建設ロボットシンポジウム(ISARC)―ISARCの20年を振り返って―」『建設の施工企画』2007年1月、61-69頁。 
  • 久武経夫、中里邦子「~産・官・学 協調による未来展望~ 大学との更なる協調を」『土木コスト情報』2011年4月、15-27頁。 
典拠管理データベース ウィキデータを編集
全般
  • VIAF
  • WorldCat
国立図書館
  • アメリカ
  • 日本
学術データベース
  • CiNii Books
  • CiNii Research