ワロドン

参考:19世紀の作と見られる妖怪絵巻『化物絵巻』より「山童」

ワロドンは、日本妖怪の一つ。鹿児島県肝属郡百引村(現・鹿屋市)の民間伝承で語られている[1]

概要

百引村の伝承において、日本のの妖怪である河童のうち、にいるものをこう呼ぶ[1]。川から山に帰った河童のことともいわれており[2]、西日本の伝承上の妖怪「山童」は河童が山に入ってなるものといわれることから、ワロドンもまた山童の一種とも考えられている[3]

ワロドンは体をバラバラに切り刻まれても、元の体となって生き返るとされ[1][3]、2,3日程度で生き返るともいう[4]。これを防ぐためには、切り刻まれた肉片のうちの一切れでも食べてしまえば、ワロドンは生き返ることができないといわれるが[1]、肉が不味いことを察知しているのか、多くの動物はこの肉を食べようとしないという[4]。このほかに河童と同様、を嫌うともいう[1]

馬の足跡にたまった水の中に千匹も住んでおり、これがいると水が濁り、犬も逃げ出すという[1]。身長は1メートルほどともいうが[5]、この馬の足跡にまつわる伝承から、体の大きさを自在に変えることができるという説もある[4]

名称の「ワロドン」は、「ヤマワロ(山童)」が河童に対する忌み言葉で、「ワロドン」は2段階の忌み言葉と考えられており[6]、「ヤマワロ」の「ヤマ」を略して「殿」を意味する「ドン」を付けたとの解釈もある[5]

また鹿児島の大隅地方では、山に帰った河童のことを「オジドン」と呼び[7]、やはり山童の一種と考えられており[8]、ワロドンと同一視されている[1]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g 大藤他 1956, p. 1756
  2. ^ 日野他 1926, p. 314.
  3. ^ a b 村上 2000, p. 368
  4. ^ a b c 人文社 2005, p. 153
  5. ^ a b 草野 1997, p. 337
  6. ^ 今野圓輔 編『日本怪談集』 妖怪篇、社会思想社現代教養文庫〉、1981年、72頁。ISBN 978-4-390-11055-6。 
  7. ^ 日野他 1926, p. 241.
  8. ^ 村上 2000, p. 79.

参考文献

  • 大藤時彦他 著、民俗学研究所 編『綜合日本民俗語彙』 第4巻、平凡社、1956年。 NCID BN05729787。 
  • 草野巧『幻想動物事典』新紀元社、1997年。ISBN 978-4-88317-283-2。 
  • 人文社編集部『諸国怪談奇談集成 江戸諸国百物語 西日本編』人文社〈ものしりシリーズ〉、2005年。ISBN 978-4-7959-1956-3。 
  • 日野巌・日野綏彦 著「日本妖怪変化語彙」、村上健司校訂 編『動物妖怪譚』 下、中央公論新社中公文庫〉、2006年(原著1926年)。ISBN 978-4-12-204792-1。 
  • 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年。ISBN 978-4-620-31428-0。 

関連項目