ラベリング理論

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ラベリング理論(ラベリングりろん、英語: Labeling theory)とは、ヒトの《逸脱行動》に関する理論であり、1960年代にシカゴ学派に属する、ハワード・ベッカー(英語版)らによって提唱された。従来の《逸脱行動》を単なる社会病理現象として扱ってきたアプローチとは一線を画し、《逸脱》というのは、行為者の内的な属性ではなく、周囲からのラベリング、すなわち「レッテル貼りによって生み出されるものだ」と捉える。

従来型の理論との相違点

ラベリング理論が発表される前までの逸脱に対する社会病理学的なアプローチでは、例えば“髪を染めている者が「不良」だ”などと勝手に定義するため「《不良の定義》は客観的に成立する」としてしまうような、非常に単純な考え方をしていた。だが、ベッカーは1963年に初版が発刊されたOutsidersにおいてそうした考え方を排し、「逸脱などの行為は、他者からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出される」と指摘した。なお、ネガティブなラベルは「社会的スティグマ」または単に「スティグマ」と呼ぶ[1]

社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則を設け、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのラベルを貼る事によって、逸脱を生み出すのである。 — 『アウトサイダーズ[2]

従来の逸脱論が逸脱者にばかり着目していた。これに対してラベリング理論では、規則を作成し執行する人々と逸脱者を対等に扱い、双方の相互作用の過程として逸脱を捉えていった。

歴史

ベッカーの理論は、ロバート・キング・マートン自己成就的予言や、1951年にE・M・レマートが発表した第2次逸脱といった概念に基いて発展した。なお、ベッカーは『アウトサイダーズ』において、マリファナ使用者やジャズメンへの聴き取り調査や参与観察を行った[注釈 1]。そうした調査結果に基いて理論を構築していった手際の良さによって、『アウトサイダーズ』はしばしば社会学研究の手本とも見なされている。こうして形成されていったベッカーの理論は、やがて「ラベリング理論」と呼ばれるようになり、逸脱論の中に新たな流れを作り出していった。その意味でラベリング理論は、社会学史上の重要な理論と言える[3]

このラベリング理論は後にJ・I・キツセやM・B・スペクターらにより、構築主義へと展開されていった。

参考文献

  • ハワード・ベッカー『完訳 アウトサイダーズ+ラベリング理論再考』現代人文社、2011年10月。 - 初版刊行10年後に書かれた「ラベリング理論再考」が添えられている。これはラベリング理論に対する批判への反論と、社会学研究の方法がどうあるべきかについての解説を含む。
  • Becker(1963), Outsiders. New York: Free Press.(revised 1973).

脚注

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注釈

  1. ^ ベッカー自身がジャズ・ピアニストである。

出典

  1. ^ 森下伸也『社会学がわかる事典』2000年、日本実業出版社、73頁。
  2. ^ 『完訳 アウトサイダーズ+ラベリング理論再考』
  3. ^ 『完訳 アウトサイダーズ+ラベリング理論再考』村上直之(翻訳者)による解説文およびあとがき。

関連項目