ボルツマンの原理(ボルツマンの関係式、ボルツマンの公式)は、統計力学のミクロカノニカル分布において、エントロピーと微視的な状態数を関連づける式である。エントロピー S は微視的な状態数 Wを用いて、
と表される[1]。ここで対数 log は自然対数であり、係数 k はボルツマン定数である。
エントロピー増大則により、断熱過程においてエントロピーが減ることはなく、不可逆な断熱過程においてはエントロピーが増える。自由膨張のような不可逆な変化は、系が微視的に取り得る状態を増やす。これはエントロピーが状態数の増加関数であることを示唆している[2]。
この式はボルツマンによって1872年から1875年にかけて最初に定式化され、1900年にマックス・プランクによって現在の形に書き直された。
二つの独立な系の状態数がそれぞれ W1, W2 であるとき、これらを合成した系の状態数は W1×W2 で表される。一方、それぞれの系のエントロピーがそれぞれ S1, S2 であるとき、これらを合成した系のエントロピーは S1+S2 で表される。したがって、エントロピーが状態数の関数として表されるならば、状態数の対数に比例する[2]。
1934年にスイスの物理化学者ヴェルナー・クーン(英語版)は、ボルツマンの公式を用いて、ゴム分子の状態方程式を導出することに成功した。これはゴムのエントロピーモデルとして知られる。
脚注
- ^ 田崎 晴明『統計力学Ⅱ』p.321
- ^ a b Toda, Kubo & Saito, p.30
参考文献
- M.Toda, R.Kubo and N.Saito (1992). Statistical Physics I - Equilibrium Statistical Mechanics. Solid-State Sciences (2nd ed.). Springer. ISBN 3-540-53662-0
- 田崎晴明『統計力学Ⅰ』培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年。ISBN 978-4-563-02437-6。
関連項目
外部リンク
- Introduction to Boltzmann's Equation(2002年11月18日時点のアーカイブ)
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