ベルリナイト

ベルリナイト
水熱合成法を用いて人工的に製造されたベルリナイト結晶
分類 リン酸塩鉱物、砒酸塩鉱物、バナジン酸塩鉱物
シュツルンツ分類 VII/A.01
Dana Classification 38.04.02.01
化学式 Al[PO4]
結晶系 三方晶系
対称 P3121 (152) または P3221 (154)[1]
へき開 なし
モース硬度 ≈ 6.5
無色、ピンクグレーから淡いピンク
条痕
密度 実測: 2.64〜2.66; 計算: 2.618[2]
その他の特性 しばしば暗赤色蛍光を呈する
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学
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ベルリナイト: Berlinite)とは、シュツルンツ分類で「リン酸塩鉱石ヒ酸塩鉱石バナジン酸塩鉱物」に分類される希少な鉱物。結晶構造は三方晶系で、組成式は Al[PO4] であり、化学的にはリン酸アルミニウムである。

ベルリナイトは主に表面に半透明の光沢をもった繊維状、球晶状、粒状から大きな集合鉱石(ドイツ語版)[訳語疑問点]として産する。 純粋なものは無色透明である。格子欠陥もしくは多結晶形成のため光を多面反射し、白く見えることもある。外来原子(ドイツ語版)のため、ピンクグレーから淡いピンク色を呈し、透明度が若干下がることもある。

特徴

紫外光下において、多くのベルリナイトは蛍光ペンに似た暗赤色の蛍光を示す。

名前の由来と歴史

ベルリナイトはスウェーデンの Bromölla にある Näsum 近郊の Västanå(英語版) 鉱山にて初発見され、1868年にクリスチャン・ヴィルヘルム・ブロムストラント(英語版、スウェーデン語版)により記載された。名前は、スウェーデン、ルンドおよびウプサラ化学および鉱物学教授ニルス・ヨハン・ベルリン(英語版) (1812–1891) に因み名付けられた。

日本では山口県の日の丸奈古鉱山において仮晶の状態で、また2010年には福岡県平尾台千仏鍾乳洞で発見されている。

分類

旧来の、まだ使われているシュツルンツ分類第8版(ドイツ語版)ではベルリナイトを「外来アニオンのない無水リン酸 [PO4]3− 塩鉱物」に分類している。さらに、Alarsite, ベリロナイト、ハールバット石、リチオフォスフェイト(英語版)、Nalipoite, Olympite、Rodolicoite と共に無名の群を成し、番号 VII/A.01 が付されている。

2001年から国際鉱物学連合が採用しているシュツルンツ分類第9版(ドイツ語版)でもベルリナイトを「無水、無外来アニオンリン酸塩鉱物など」に分類する。ここからさらに、カチオンの大きさを比較して「小カチオンからなるもの(より大きい付加カチオンのあるものも含む)」に細分類し、Alarsite と Rodolicoite と共に無名の群を作って番号 8.AA.05 を付す。

主に英語圏で使われるダナ分類(ドイツ語版)でもベルリナイトを「リン酸塩鉱物、砒酸塩鉱物、バナジン酸塩」 に分類し、そこから「無水リン酸塩等」に細分類する。さらに、Alarsite と Rodolicoite を含む「ベルリナイト群(ドイツ語版)38.04.02 を作り、「無水リン酸塩等、 A+XO4」に置く。

形成と分布

ベルリナイトは高温化の水熱合成または交代作用(ドイツ語版)により生じ、アウゲライトとアタッコライトと共生(ドイツ語版)関係にあり、よく鉄天藍石トロール石(ドイツ語版)に付着して産出する。

2013年までにおおよそ20箇所でしか発見されていない希少な鉱物である。タイプ産地である Västanå 鉱山の他、スウェーデン、トシュビュー市近郊の Hålsjöberg 採石場にも産する。

ドイツでは、バイエルン州ヴィーザウ(ドイツ語版)-トリーベンドルフ(ドイツ語版)玄武岩採掘場とザクセン州エーレンフリーデルスドルフ(ドイツ語版)近郊のザウベルク鉱山でベルリナイトが発見されている。

スイスではこれまでにヴァレー州テルベル(ドイツ語版)でしか見付かっていない。

他には、オーストラリアノース・バーネット(ドイツ語版)において、 Cotter River 沿いにある „Paddy's River Cu Mine“ とペリー山(英語版)に産するほか、ブラジルミナスジェライス州サプカイア・ド・ノルテ(ポルトガル語版)近郊のサプカイア鉱山とPiauí Valley 近郊の „Poço d'Antas“ 採掘場、マダガスカルアンバトフィナンドラアナ(ドイツ語版)にある Itremo Massiv(Tsiambenana 採石場)、ルワンダ西部州、ガツンバ県の複数地点、ルーマニアフネドアラ県 にある Cioclovina-洞窟、スペインクレウス岬チェコズラテー・ホリ(ドイツ語版)、 (ドイツ語名 Zuckmantel)、アメリカのアリゾナ州ヒラ郡とメイン州ワシントン郡に産出する。

結晶構造

ベルリナイトは三方晶系で石英と同様に鏡映異性体を持ち、左手型では空間群 P3121、右手型では P3221 に属する。両空間群は [100] 軸に平行な二回対称軸を持つ、同じ分類に属する。

左手型の格子定数a = 4.9458 Å, c = 10.9526 Å であり、右手型の格子定数は a = 4.9438 Å, c = 10.9498 Å[3]既約単位格子あたり3組成式を含む。

ベルリナイトは石英と同種構造(ドイツ語版)であり、空間群は同じであるが格子定数が違う。

関連項目

文献

  • Helmut Schröcke, Karl-Ludwig Weiner (1981), Mineralogie. Ein Lehrbuch auf systematischer Grundlage (ドイツ語), Berlin; New York: de Gruyter, pp. 609-610, ISBN 3-11-006823-0
  • Paul Ramdohr, Hugo Strunz (1978), Klockmanns Lehrbuch der Mineralogie (ドイツ語) (16. ed.), Ferdinand Enke Verlag, p. 622, ISBN 3-432-82986-8

外部リンク

  • Mineraldatenblatt - Berlinite (engl., PDF 62 kB)
  • Mineralienatlas:Berlinit
  • Berlinite bei mindat.org (engl.)

出典

  1. ^ American Mineralogist Crystal Structure Database – Berlinite (engl., Linksform P3121: 2007, Rechtsform P3221: 1997)
  2. ^ Berlinite, in: John W. Anthony, Richard A. Bideaux, Kenneth W. Bladh, Monte C. Nichols (Hrsg.): Handbook of Mineralogy, Mineralogical Society of America, 2001 (PDF 61,8 kB)
  3. ^ American Mineralogist Crystal Structure Database - Berlinite (engl., Linksform P3121: 2007, Rechtsform P3221: 1997)